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4年後のアメリカ大統領選挙
高橋和夫(2020.3.15:『まなぶ』4月号掲載)



 アメリカの大統領選挙が8カ月後に迫って来た。だれが候補者となるのか。共和党は現職のドナルド・トランプで間違いないだろう。民主党の候補者選びでは激戦がつづいている。

 ところで、その次の2024年の大統領選挙では、だれが候補者となるだろうか。もし11月の大統領選挙で民主党が勝てば、その人物が再選をめざすだろう。問題は、それがだれかわからない点である。

 それでは共和党はどうなるだろうか。11月の大統領選挙で民主党が勝てば、当然ながら共和党は2024年には、新たな候補者を探すだろう。仮にトランプが再選されても、アメリカの大統領は3選を禁じられているので、いずれにしろ2024年には共和党は新たな候補を立てる必要がある。どのような顔ぶれの立候補が予想されているのだろうか。

 筆頭は、ニッキー・ヘイリーである。トランプが国連代表に、つまり駐国連大使に任命した人気のタカ派政治家である。インド系でシーク教からキリスト教に改宗した女性だ。キリスト教福音派の熱い支持を受けている。トランプによって国連代表に任命されたが、2018年12月に職を辞した。トランプ政権では辞めた閣僚は少なくないが、ヘイリーの辞め方は目立っていた。

 というのは、大半の閣僚は首にされたのだが、ヘイリーはみずから予定通りの行動と説明して辞任した。なぜだろうか。沈しずみそうな船からネズミが逃げだすように、トランプ政権の将来に不安を感じ取ったからだろう、と推測されている。大統領選挙となれば、当然ながら今の副大統領のマイク・ペンスと共和党の指名を争うこととなる。その面でも、早くトランプ政権から身を引いて、副大統領に突然に弓を引くという印象を薄めようとしたのだろうか。

 ペンスはトランプの忠実な副大統領として今日まで務めてきた。政権の主要メンバーなのにツイッターで首を通告されなかった稀な存在である。なぜだろうか。

 それは、このペンスがキリスト教福音派を代表しているからである。トランプは、この人物をインディアナ州の知事から副大統領候補に抜擢した。この人選によってトランプは福音派の支持を固めた。ペンスはインディアナ州知事時代に日本企業の同州への投資誘致に努力している。外交筋によると夫人はカラオケの大ファンという。

 そして、トランプの後釜をねらうマイクが、もう一人いる。マイク・ポンペオ国務長官である。1986年にウエスト・ポイントにある陸軍士官学校を首席で卒業している。その同級生に現在の国防長官のマーク・エスパーがいる。ポンぺオは、下院議員からトランプにCIA(アメリカ中央情報局)の長官に、そして国務長官に抜擢された。部下を叱責したりジャーナリストと衝突したりという激しい性格で知られている。序列的にはアメリカ政府では国務長官は大統領、副大統領に次ぐ地位である。二人のマイクの争いとなるのだろうか。

 ポンペオ国務長官の陸軍士官学校を首席で卒業という輝かしい経歴は、一人の先輩を想起させる。ダグラス・マッカーサー将軍である。

 この人物もウエスト・ポイントを首席で卒業している。第2次世界大戦では対日戦争の指揮を執った。そして朝鮮戦争でもアメリカ軍を中心とする国連軍を指揮した。しかし、戦略に関して当時のハリ―・トルーマン大統領と対立して解任されている。その後は、大統領をめざしたが、アメリカ国民の支持を得ることはなかった。

 代わりに大統領となったのは、長年マッカーサーの副官を務めた経験のあるドワイト・アイゼンハワー将軍だった。同将軍は陸軍士官学校を164人中の61番で卒業している。アイゼンハワーは、1944年のノルマンディー上陸作戦を成功させて英雄となった。なぜ凡庸な成績の人物が大作戦を任されたのだろうか。それはアイゼンハワーの人柄だったと言われる。イギリス軍やアメリカ軍の個性の強い将軍たちの上に立つ際に求められたのは自己主張の強さではなく、温厚さと調整能力だった。恐らくポンペオには欠けている資質だろう。次のアメリカ大統領選挙を少し先走って考えて見た。(了)