中央アジア・コーカサス地域をめぐるドローンディプロマシー -トルコ・イラン関係の一側面-

1.存在感を増すトルコと対抗するイラン

 ロシア-ウクライナ戦争開戦以降、中央アジアからコーカサスに至る地域においてロシアの影響力が低下する一方、軍事用UAV(Unmanned Aerial Vehicle:無人航空機)の輸出を通じてトルコの存在感が増してきている。トルコは、2020年にアゼルバイジャンへ軍事用UAVを輸出し、その後は中央アジア諸国にも輸出を進めてきた。その結果、現在では中央アジア5か国のうち4か国[i]がトルコから軍事用UAVを輸入している。

 一方、伝統的にこれらの地域に影響力を有していたイランは、トルコから軍事用UAVを輸入した国家と対立関係にある国家に対して軍事用UAVの輸出を進めており、その結果、キルギス共和国-タジキスタン間の紛争や、アゼルバイジャン-アルメニア間の紛争において、トルコ製の軍事用UAVとイラン製の軍事用UAVが睨みあう状況が現出しつつある。

 こうした状況が生まれた背景には、どのような事情があるのか。本稿では、先述の2つの紛争の現状と、トルコ・イラン両国が“ドローンディプロマシー”を通じて紛争に関与する過程を確認した上で、その背景にあるトルコの外交ビジョン、2023年9月に発生したアゼルバイジャン軍による軍事侵攻、ウクライナ戦争への影響の可能性等についても考察していく。

2.キルギス共和国-タジキスタン間の紛争

 ソビエト連邦崩壊に伴う独立以降、キルギス共和国とタジキスタンの間では約1,000㎞にわたる両国国境のうち半分程度しか確定できておらず、国境をめぐる争いが続いている[ii]。特にキルギス共和国西方のバトケン(Batken)地域は、ウズベキスタン(北東)、タジキスタン(北、南西)と境界を接する地域であるが、両国の飛び地を内側に抱えており、国境や天然資源をめぐる衝突が相次いでいた[iii]

 キルギス共和国が軍事用UAVに関心を抱くようになったのは、2021年4月にタジキスタンとの間で発生した衝突がきっかけと言われている。キルギス共和国当局によると、この衝突により36名が死亡したが、同国は航空兵力として少数の武装ヘリしか保有しておらず、同国大統領のジャパロフ(Sadyr Zhaparov)が嘆いたように、今回の衝突で戦闘機を一切展開することが出来なかった。この反省からキルギス共和国は航空兵力の整備、その中でも安価な軍事用UAVに注力するようになり、早くも同年中にトルコからバイラクタルTB2、ロシアからオルラン-10(Orlan-10)、そして中国からWJ-100を購入したと言われている[iv][v]

 ここで目を引くのが、同国の軍事用UAVにおけるトルコの存在感である。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)のデータベースによると、キルギス共和国はバイラクタルTB2だけでなく、2022年にはバイラクタル・アクンジュ(Bayraktar Akıncı)やアンカ、アクスングル(Aksungur)なども輸入している(但し、ロシアと中国からの輸入についてはデータベースに登録されていない)[vi]。機種の多様さ、そしてバイラクタル・アクンジュやアクスングルといった最新機種の提供など、トルコによるキルギス共和国への輸出は、他の輸出先と比較すると非常に手厚いことが分かる。

【表1】キルギス共和国のUAV輸入状況[vii]

キルギス共和国20212022
輸出元トルコトルコ
機種バイラクタルTB2 (3)アクンジュ(2)
アクスングル(2)
アンカ(2)
※カッコ内の数字は輸入機数

 一方、タジキスタンも、2022年初めに国防大臣がトルコのUAV製造会社バイカルマキナ社を訪問し、同社製品の購入に向けて積極的な交渉に入った。タジキスタンとバイカルマキナ社の交渉はキルギス共和国の国会でも話題になり、注目を集めたが、最終的には交渉は不調に終わった。その理由は明らかにされていないが、キルギス共和国はトルコ政府に対してタジキスタンへのUAV輸出に関する懸念を表明し、トルコ政府側もこうした声に配慮していた[viii]。こうしたキルギス共和国の懸念と抗議が、トルコ政府に輸出を断念させるきっかけになったという見方がある[ix]

 このようにバイカルマキナ社・タジキスタン間の交渉が頓挫する中、2022年5月にイランは、タジキスタン首都のデュシャンベ近郊に同国製軍事用UAVのアバビル-2(Ababil-2)製造工場を建設したと発表した。さらに、工場の竣工式にはイラン革命防衛隊参謀長のモハンマド・バゲリ(Mohammad Bageri)が出席し、安全保障と平和の増進のため、イラン製兵器や装備を同盟国・友好国に輸出することが出来るとアピールをした[x][xi]

 トルコからの輸入交渉の不調と、イランとの間の製造工場建設に係る交渉が、時系列的にどのような関係にあるのかは明らかになっていないが、報道記事の中には、トルコとの交渉が不調に終わったことで、タジキスタンがイランとの交渉に転じ、工場建設に至ったという意見もある[xii]。しかし、4月28日の段階では少なくとも交渉が継続していたという情報もあり、仮にこれが正しいとすれば、その後1か月に満たない期間でイランはタジキスタンとの交渉を取りまとめ、UAV製造工場を建設したことになる[xiii]。可能性の一つとしてだが、タジキスタンはトルコとの間の交渉を進めつつ、並行してイランとの間でUAVに関する交渉をしていた、という見方も出来るだろう。

 事柄の結果を見ると、トルコはタジキスタンへの輸出に失敗し、ライバルであるイランにタジキスタン市場を奪われたと見ることが出来るが、イランにとっては喜ばしい結果とは言い切れない状況のようである。タジキスタンがアバビル-2をキルギス共和国との紛争に投入した結果、イランはキルギス共和国から懸念を表明され、キルギス共和国との関係を維持したいイランは、タジキスタンに対してアバビル-2の使用を控えるよう呼びかけたという情報も流れている[xiv][xv]。また、米国平和研究所(The United States Institute of Peace)のギャレット・ナダ(Garrett Nada)によれば、中央アジア5か国の中でイラン製軍事用UAVを輸入しているのはタジキスタンのみであり、依然としてトルコからの輸入が多くを占めている現状も変化していない[xvi]

 こうした情報を踏まえると、イランはかろうじてタジキスタンを繋ぎ止めたものの、トルコの勢いを押し返すには至らず、新たな問題を抱え込んでしまった、と見ることも出来るだろう。

3.第2次ナゴルノカラバフ紛争後のナゴルノカラバフ地域の情勢

 アゼルバイジャンとアルメニアもまた、ソビエト連邦崩壊に伴う独立以降領土の帰属をめぐって長く対立してきた。2020年9月には第2次ナゴルノカラバフ紛争が勃発して両国軍が全面的に衝突、開戦直前にトルコからバイラクタルTB2を輸入したアゼルバイジャンは同機を戦闘に投入し、アルメニア軍に大きな損害を与えた[xvii]

 同年11月にロシアの仲介で結ばれた停戦合意でも、こうした経過を反映して、アルメニアがこれまで占拠していた全ての緩衝地帯とナゴルノカラバフ地方の約4割をアゼルバイジャンに引き渡すことが定められた[xviii]。しかし、表2に記載したように、停戦後もアゼルバイジャン軍は、ナゴルノカラバフ地域への侵入やアルメニア軍との衝突を繰り返している。

 2022年12月には、アゼルバイジャンの環境活動家を名乗る人物がラチン回廊を封鎖したことで、ナゴルノカラバフ地域内のアルメニア領への物流が滞り、同地方では食料、日用品、医薬品等が不足するようになっていった[xix][xx]。また、2023年4月にはアゼルバイジャン軍がラチン回廊を迂回してナゴルノカラバフ地域に至る道路にも検問所を設置するなど、アルメニア側への圧力を強めてきた[xxi]

 こうした動きに加え、アゼルバイジャンは2022年にバイラクタル・アクンジュの輸入を決定(2023年納入予定)するなど、戦力の更なる強化にも努めてきた[xxii]

 

【表2】第2次ナゴルノカラバフ紛争後の主な出来事(2021年~2023年4月)[xxiii]

年月日事案概要
2021年5月・アゼルバイジャン軍がセブ湖(Sev Lake)で国境を横断して アルメニア領内に侵入
2021年7月・アゼルバイジャンのアリエフ大統領は、係争地域の一部を含む 東ザンゲズール経済圏の設立を表明 ・カルバハル(Kelbajar)-ヴァルデニス(Vardenis)間の国境地帯 で両軍が衝突
2021年9月・アゼルバイジャン警察が、イランと南コーカサス地域、アルメニア 国土の南北を接続する主要幹線道路に警察による検問を設置
2022年3月・アゼルバイジャン軍が、戦略的な要衝であるカルタングルーク (Kartanglukh)高地を占領
2022年8月・アゼルバイジャン軍がラチンの山岳地帯及びナゴルノカラバフ地 域北部で軍事行動を開始。ドローンによる攻撃で少なくともアゼル バイジャン軍兵士1名、アルメニア軍兵士2名が死亡 ・アゼルバイジャン軍がラチンの市街地を占拠
2022年9月・2日間にわたり両軍が国境付近で衝突し、数百名の兵士が死亡
2022年12月・アゼルバイジャンの活動家がラチン回廊を封鎖
2023年4月・アゼルバイジャンは、ラチン回廊の入り口に検問を設置

  第2次ナゴルノカラバフ紛争で調停役となったロシアは、2022年2月のロシア-ウクライナ戦争の勃発以来、同戦争の遂行に多大な労力を投じているため、紛争抑止に向けて有効な手を打つことが出来ずにいた。従前よりアルメニアは自国の安全保障をロシアに大きく依存してきたが、ロシア-ウクライナ戦争の勃発によりロシアからの武器供給が滞るようになったこと、2020年11月の停戦合意に基づき派遣されていたロシア軍の平和維持部隊がアゼルバイジャンの行動を抑止出来ていないこと等を受け、ロシアに対して強い不満を表していた[xxiv][xxv]

 こうした状況の下に置かれたアルメニアは、アゼルバイジャンとの和平交渉を継続しつつ、同国の攻勢を止めるためにトルコとの間で関係正常化に向けた交渉にも着手し、加えて西側諸国との関係の強化にも動くなど、自国の安全保障のために多角的な外交努力を続けている[xxvi][xxvii][xxviii]。そしてこうした外交努力の一環に含まれているのが、隣国イランとの関係強化である[xxix]

 2022年10月、イラン革命防衛隊のヤヒヤ・ラヒム・サファヴィ少将は、イラン製軍事用UAVに対するニーズの高まりをアピールした際、購入を希望している国家の中にアルメニアが含まれていることを公表した[xxx][xxxi]。実際に軍事用UAVが納入された時期や納入された機種、機数等、交渉の詳細については明らかにされていないが、2023年4月以降、アルメニア軍がイラン製のUAVを使用したという情報も流れていた[xxxii]

 なお、アルメニアがイランから輸入した軍事用UAVの機種についても確定した情報が流れていないが、2022年12月段階の情報では、シャヘド-136(Shahed-136)が供給される可能性が高いという情報が出ていた[xxxiii]。また、2023年7月の報道では、アルメニアが戦場で使用したのはシャヘドであったと報じられた[xxxiv]

 以上のように、アルメニアはイランからの軍事用UAV輸入を含め、自国の安全を確保するために様々な努力をしてきた。しかし、2023年9月18日、アゼルバイジャン外務省からアルメニアに対して、同国がナゴルノカラバフ地域に展開している軍事力の撤退、軍事・行政施設の放棄を要求し、19日にはアゼルバイジャン軍は対テロ戦闘を理由にナゴルノカラバフ地域に展開、同地域の主要都市であるステパナケルト(Stepanakert)などに砲撃を実施した[xxxv][xxxvi]。翌20日にはロシアの提案を受け、アゼルバイジャン軍と同地域で独立を宣言していたアルツァフ共和国が停戦に合意したが、その内容はアルツァフ共和国の軍の解散と完全な武装解除と事実上の降伏に等しい結果であった[xxxvii][xxxviii]。結果として、アルメニアに対するイランの支援は、アゼルバイジャンの動きを抑制するには至らなかった。

4.両事案に共通する背景事情

 トルコとイランがこれらの紛争地に軍事用UAVを輸出した理由は何だったのか。2つの紛争事案を個別に取り上げて解説する記事は多いが、2つの事案の関連性やその背後にある両国の意図、戦略については、明らかになっていない。

 しかし、トルコは中央アジアやコーカサス地域において、テュルク系民族の国家との関係強化を通じて、地域における影響力を拡大させようとしてきたと言われており、本稿で事例として取り上げた紛争においてトルコが支援した国家も、テュルク系の国家に含まれている[xxxix][xl]。2つの事案とトルコの行動の背後には、テュルク系諸国家との連携を通じた影響力の強化、という共通の要素の存在が伺える。

 軍事用UAVの輸出の背後には、テュルク系諸国家との連携を強化したいというトルコの思惑があるのではないか、という意見は、キルギス共和国への軍事用UAVに関する記事の中でも示されている[xli]。上述のように、キルギス共和国への軍事用UAV輸出は、機種の多様さ等の観点から極めて異色の事例であるが、この他にもアゼルバイジャンやカザフスタンなどのテュルク系国家に対しては、最新機種の提供や機体のライセンス生産など、単に機体を輸出する以上の取り扱いをしている[xlii]

 また、このようなテュルク系諸国家との連携を強める要素として注目を集めているのが、アルメニア国土を介してアゼルバイジャン本土と飛び地となっているナヒチェヴァン自治共和国を結ぶ「ザンゲズール回廊」建設構想である[xliii]。これまで、トルコと中央アジアの貿易の多くはロシアやイランの国土を通じてなされており、このうちイラン国内を通過するルートは、トルコ-イラン関係の風向きに応じて悪影響を受けてきた。しかし、アゼルバイジャンが進めるザンゲズール回廊が実現すれば、トルコは同国内を経由してカスピ海や中央アジアへアクセスすることが出来るようになり、イランの影響を受けづらくなる[xliv]

 以上のようなトルコの行動は、イランにとってどのような意味を持つのか。中央アジア研究を専門としているオタベク・オモンクロフ(Otabek Omonkulov)によれば、イランは、こうした中央アジアからコーカサスにかけて影響力を強めようとするトルコの動きを、国内の統一と領土の一体性に対する脅威とみなしているという[xlv]。イランにはアゼルバイジャン系の住民が居住しており、その割合は全人口の約20%と言われている。イラン政府はアゼルバイジャン系住民の分離独立の動きを強く警戒しており、テュルク系民族間の連帯を旗印に掲げるトルコ外交を、国内の分離独立運動を刺激しかねない要素として見ている[xlvi]

 またアゼルバイジャン-アルメニア間の紛争に関して、アゼルバイジャンだけでなく同国を支援するイスラエルの影響力拡大も警戒したイランは、2021年と2022年の2回にわたりイラン-アゼルバイジャン国境付近で大規模な軍事演習を実施してきた[xlvii][xlviii]

 さらに、アゼルバイジャンの進めるザンゲズール回廊建設構想に関しては、先述のようにトルコの中央アジアに対するアクセスの強化、これに対するイランの影響力の低下だけでなく、隣国アルメニアとのアクセスという点でもイランに重大な影響を及ぼす可能性がある。同回廊の建設予定地であるアルメニア・シュニク(Syunik)県はイラン-アルメニア両国が唯一繋がる地域であり、回廊が建設された場合、イランはアルメニアと、アルメニアを介したEU市場等へのアクセスを、トルコやアゼルバイジャンに握られる可能性があるからである[xlix][l][li]

 このように、本稿で事例として取り上げた紛争やその背景などを見ていくと、トルコとイランのドローンディプロマシーの背後には、テュルク系諸国家との連携を通じた影響力強化を図るトルコとそれに対抗するイランという、より大きな対立の構図が浮かび上がってくる。

5.アゼルバイジャンによる軍事侵攻と今後の見通し

 現在までのところ、トルコから軍事用UAVを輸入した国家が大きな戦果を挙げ、ドローンディプロマシーを通じたトルコの影響力が増してきている一方、それに対抗しようとするイランの動きが成果を挙げているとは言い難い状況である。本稿で取り上げたように、タジキスタンではトルコを市場から排除したものの新しい問題を抱えることになり、アルメニアでは2023年9月19日のアゼルバイジャン軍による軍事侵攻を抑止するには至らなかった。特に後者は、トルコの影響力拡大に対抗しようとするイランにとって大きな打撃であったかのように見える。

 しかし、アルメニアのパシニャン首相は、2022年4月の段階でナゴルノカラバフ地域の地位の問題は目的ではなく、そこに住むアルメニア系住民の安全と権利の確保を重視する姿勢を見せていた[lii]。さらに2023年4月には、国際的な枠組みを通じてアルメニア系住民の権利が保護されるのであれば、アルメニアによるナゴルノカラバフ地域への領有権主張を放棄するという発言もしている[liii]。イランも懸念を表明するにとどまり、さらにナゴルノカラバフ地域をアゼルバイジャンの一部とみなすと表明していたことを踏まえると、いずれナゴルノカラバフ地域を失うことについては、イランもアルメニアもある程度織り込み済みだったという見方も出来る[liv]

 今後の情勢次第では、イランが更に大きな支援をアルメニアに行う可能性は残っている。そして、本稿の内容を踏まえると、その焦点となるのは、ザンゲズール回廊と、その建設予定地であるアルメニア・シュニク県をめぐる争いになるだろう。また、今回の軍事侵攻を受けてアルメニアでは現政権への不満の声も上がっている[lv]。アルメニアの国内情勢や政治の動向も、今後の見通しに大きな影響を与える可能性があるだろう。

 さらに、こうした動きは、ロシア-ウクライナ戦争においてイランがロシアに提供する支援にも影響を及ぼす可能性がある。アルメニアはイランが欧米諸国の制裁を回避しつつロシアに対して兵器の供給や経済取引を行うルートの一つとなっていることが問題視されてきた[lvi][lvii][lviii]。また、より目立たないが、タジキスタンにイランが建設した軍事用UAV製造工場は、ロシアに機体を供給しているのではないかという疑惑がかけられている[lix][lx]。一連の紛争におけるトルコとイランの争いは、こうしたイランによる支援ルートの存続を左右する可能性もある。仮に実現すれば、その影響はトルコとイランの二国間関係に止まらないだろう。

6.終わりに

 以上、本稿では中央アジアからコーカサス地方にかけて発生している2つの紛争を取り上げ、トルコとイランが軍事用UAVの輸出を通じて影響力を競い合っている現状を見てきた。これまでの議論からも、トルコもイランも、単に市場を拡大させたいという思いだけでなく、国際政治の動向や外交戦略など大局的な観点も踏まえて輸出を進めていることが分かる。

 トルコやイランが提供する軍事用UAVは、機体の単価も安く、輸入後の用途などに制約を課されず、そして戦場での有効性も証明されている。こうした機体は、紛争を抱え、裕福ではない中小国にとって便利な軍事アセットであり続けるだろうし、供給能力を維持・発展出来る限り、トルコやイランにとって軍事用UAVは交渉上の大きなツールであり続けるだろう。

 軍事用UAVは当然のことながら兵器であり、紛争、あるいはそれに至らないまでも対立を抱える場所において求められる。また、輸出する側にとっては、本稿で見てきたように一定の国家方針やビジョンの下、戦略的に軍事用UAVの提供を行っている面がある。それゆえに、軍事用UAVの輸出入の流れを追うことは、それを輸出する国家の方針を表す指標を探ることとなるだけでなく、より広く、国際政治における対立と協調の動向を知る上でも、大きな手掛かりとなるだろう。(了)


[i] ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタンのうち、タジキスタンを除く4か国

[ii] Aiganysh Aidarbekova, Mapping the Aftermath of the Kyrgyzstan-Tajikistan Border Clashes, Bellingcat, 2023.5.25(確認日2023年9月18日)

https://www.bellingcat.com/news/2023/05/25/mapping-the-aftermath-of-the-kyrgyzstan-tajikistan-border-clashes/

[iii] Civilsdaily, Kyrgyzstan-Tajikistan Conflict, Civilsdaily, 2022.9.23(確認日2023年9月13日)

https://www.civilsdaily.com/news/the-kyrgyzstan-tajikistan-conflict/

[iv] Paul Iddon, Why Kyrgyzstan Is Procuring Turkish And Russian Drones For Its Tiny Air Force, Forbes, 2021.11.1(確認日2023年9月18日)

https://www.forbes.com/sites/pauliddon/2021/11/01/why-kyrgyzstan-is-procuring-turkish-and-russian-drones-for-its-tiny-air-force/

[v] Francisco Olmos, Dawn of Drone Age in Central Asia, The Diplomat, 2022.11.23(確認日2023年9月24日)

https://thediplomat.com/2022/11/dawn-of-the-drone-age-in-central-asia/#:~:text=Central%20Asian%20countries%20have%20been%20stepping%20up%20their%20drone%20capabilities.&text=Kyrgyz%20President%20Sadyr%20Japarov%20signs,country%20on%20September%2013%2C%202022.

[vi] SIPRI, SIPRI Arms Transfers Database, SIPRI(確認日2023年9月18日)

https://armstrade.sipri.org/armstrade/page/trade_register.php

[vii] SIPRI

[viii] Daily Sabah, Tajikistan mulled to buy Turkish drones amid border dispute with Kyrgyzstan, Daily Sabah, 2022.4.28(確認日2023年9月18日)

https://www.dailysabah.com/business/defense/tajikistan-mulled-to-buy-turkish-drones-amid-border-dispute-with-kyrgyzstan

[ix] Paul Iddon, Turkey Likely To Get Upper Hand In Central Asia’s Drone Market, Forbes, 2022.12.22(確認日2023年9月24日)

https://www.forbes.com/sites/pauliddon/2022/12/22/turkey-could-dominate-central-asias-nascent-drone-market/

[x] Francisco Olmos, 2022.11.23

[xi] Adam Lucente, Iran opens drone factory in Tajikistan, Al-Monitor, 2022.5.17(確認日2023年9月18日)

https://www.al-monitor.com/originals/2022/05/iran-opens-drone-factory-tajikistan

[xii] Paul Iddon, 2022.12.22

[xiii] Daily Sabah, 2022.4.28

[xiv] Michael Rubin, Iran Asks Tajikistan Not To Use Iranian Drones in Dispute With Kyrgyzstan, 2023.1.1(確認日2023年9月18日)

https://www.aei.org/op-eds/iran-asks-tajikistan-not-to-use-iranian-drones-in-dispute-with-kyrgyzstan/

[xv] Military Chief: Using Iranian Drones in Tajikistan-Kyrgyzstan Dispute Unacceptable to Tehran, 2022.11.10(確認日2023年9月23日)

https://www.farsnews.ir/en/news/14010819000240/Miliary-Chief-Using-Iranian-Drnes-in-Tajikisan-Kyrgyzsan-Dispe

[xvi] Garrett Nada, Explainer: Iran’s Drone Exports Worldwide, The Iran Premier, 2023.6.12(確認日2023年9月18日)

https://iranprimer.usip.org/blog/2022/nov/16/explainer-iran%E2%80%99s-drone-exports-worldwide

[xvii] 牧田純平, ナゴルノカラバフを巡る国際関係とドローン-トルコとロシアのグレートゲーム-, 一般社団法人先端技術安全保障研究所, 2021.1.28(確認日2023年9月13日)

https://giest.or.jp/contents/reports/2543/

[xviii] 廣瀬陽子, 第2次ナゴルノ・カラバフ紛争:新たな展開と暫定的評価, 日本国際問題研究所, 2021.2.9(確認日2023年9月18日)

https://www.jiia.or.jp/research-report/post-38.html

[xix] Ewelina U. Ochab, Lachin Corridor Blockade Starves Nagorno-Karabakh, Forbes, 2023.8.8(確認日2023年9月16日)

https://www.forbes.com/sites/ewelinaochab/2023/08/08/lachin-corridor-blockade-starves-nagorno-karabakh/

[xx] Reuters, Tensions rise between Armenia and Azerbaijan over blocked supply corridor, Reuters, 2022.12.16(確認日2023年9月16日)

https://www.reuters.com/world/europe/russia-concerned-by-blocking-route-armenia-nagorno-karabakh-2022-12-15/

[xxi] The Economist Intelligence Unit, Azerbaijan sets up checkpoints on the Lachin corridor, The Economist Intelligence Unit, 2023.4.27(確認日2023年9月16日)

https://www.eiu.com/n/azerbaijan-sets-up-checkpoints-on-the-lachin-corridor/

[xxii] SIPRI

[xxiii] International Crisis Group, The Nagorno-Karabakh Conflict: A Visual Explainer, International Crisis Group, 2023.1.8(確認日2023年9月18日)

https://www.crisisgroup.org/content/nagorno-karabakh-conflict-visual-explainer

[xxiv] Joshua Kucera, Is Armenia Turning To The West?, Radio Free Europe/Radio Liberty, 2023.9.13(確認日2023年9月16日)

https://www.rferl.org/a/armenia-pashinian-united-states-west-relations-russia-analysis/32591327.html

[xxv] Ani Avetisyan, Tensions rise between Armenia, Russia, Eurasia.net, 2023.9.7(確認日2023年9月16日)

https://eurasianet.org/tensions-rise-between-armenia-russia

[xxvi] Joshua Kucera, 2023.9.13

[xxvii] Amberin Zaman, As Armenia pushes for reconciliation, Turkey plays hard to get, Al-monitor, 2022.4.26(確認日2023年9月16日)

https://www.al-monitor.com/originals/2022/04/armenia-pushes-reconciliation-turkey-plays-hard-get

[xxviii] Amberin Zaman, Turkey rises, Russia fades as Iran and Azerbaijan clash over Armenia, Al-monitor, 2023.1.31(確認日2023年9月24日)

https://www.al-monitor.com/originals/2023/01/turkey-rises-russia-fades-iran-and-azerbaijan-clash-over-armenia

[xxix] Joshua Kucera, Armenia hosts first trilateral meeting with Iranian and Indian officials, Eurasia.net, 2023.4.21(確認日2023年9月18日)

https://eurasianet.org/armenia-hosts-first-trilateral-meeting-with-iranian-and-indian-officials

[xxx] Paul Iddon, Iran May Hope To Replicate Turkey’s Success Exporting Drones. Here’s Why It Can’t., Forbes, 2022.10.30(確認日2023年9月24日)

https://www.forbes.com/sites/pauliddon/2022/10/30/iran-may-hope-to-replicate-turkeys-success-exporting-drones-heres-why-it-cant/

[xxxi] Paul Iddon, Why Armenia And Serbia Might Seek Iranian Drones, Forbes, 2022.11.25(2023年9月24日)

https://www.forbes.com/sites/pauliddon/2022/11/25/why-armenia-and-serbia-might-seek-iranian-drones/

[xxxii] Sabina Mammadli, Russia-Iran-Armenia trio: how Iranian killer-drones control war, AzerNews, 2023.4.12(確認日2023年9月24日)

https://www.azernews.az/analysis/208608.html

[xxxiii] Fuad Shahbazov, Iran’s Drone Exports to Armenia Could Undermine Peace Process in Karabakh, The Jamestown Foundation, 2022.12.16(確認日2023年9月18日)

https://jamestown.org/program/irans-drone-exports-to-armenia-could-undermine-peace-process-in-karabakh/

[xxxiv] Aze.Media, Armenia uses Iranian drones to hit Azerbaijani positions, Aze.Media, 2023.7.17(確認日2023年9月18日)

https://aze.media/armenia-uses-iranian-drones-to-hit-azerbaijani-positions/

[xxxv] Ruslan Rehimov, Azerbaijan demands Armenia to withdraw its forces from Karabakh, Anadolu Agency, 2023.9.18(確認日2023年9月19日)

https://www.aa.com.tr/en/world/azerbaijan-demands-armenia-to-withdraw-its-forces-from-karabakh/2995067

[xxxvi] Virginia Pietromarchi and Federica Marsi, Azerbaijan-Armenia tensions updates: Azeri attack in Nagorno-Karabakh, Aljazeera, 2023.9.19(確認日2023年9月21日)

https://www.aljazeera.com/news/liveblog/2023/9/19/nagorno-karabakh-live-azerbaijan-launches-new-anti-terror-operation

[xxxvii] Aljaseera, Azerbaijan and ethnic Armenian forces reach Nagorno-Karabakh ceasefire deal, Aljazeera, 2023.9.20(確認日2023年9月21日)

https://www.aljazeera.com/news/2023/9/20/azerbaijan-and-ethnic-armenian-forces-reach-nagorno-karabakh-ceasefire-deal

[xxxviii] Tim Lister, Anna Chernova, Christian Edwards and Radina Gigova, Azerbaijan says it has retaken breakaway Armenian enclave after separatists surrender, CNN, 2023.9.21(確認日2023年9月21日)

https://edition.cnn.com/2023/09/20/asia/nagorno-karabakh-russia-ceasefire-intl/index.html

[xxxix] Emil Avdaliani, Turkey’s Return to Central Asia, The Royal United Services Institute for Defence and Security Studies, 2021.4.1(確認日2023年9月17日)

https://rusi.org/explore-our-research/publications/commentary/turkeys-return-central-asia

[xl] Alex Vatanka, Iran, Turkey, and the future of the South Caucasus, 2022.5.4(確認日2023年9月17日)

https://www.mei.edu/publications/iran-turkey-and-future-south-caucasus

[xli] Paul Iddon, 2022.12.22

[xlii] Almaz Kumenov, Kazakhstan seals deal to produce Turkish drones under license, Eurasia.net, 2022.5.13(確認日2023年9月24日)

https://eurasianet.org/kazakhstan-seals-deal-to-produce-turkish-drones-under-license

[xliii] Jeyhun Aliyev , ‘Provision on opening of Zangezur corridor great political achievement, historic victory’, Anadolu Agency, 2022.2.6(確認日2023年9月17日)

https://www.aa.com.tr/en/asia-pacific/provision-on-opening-of-zangezur-corridor-great-political-achievement-historic-victory/2601883

[xliv] Cavid Veliyev, Iran’s Frustrations With the Zangezur Corridor, The Jamestown Foundation, 2022.9.23(確認日2023年9月24日)

https://jamestown.org/program/irans-frustrations-with-the-zangezur-corridor/

[xlv] Murat Sofuoglu, Are Azerbaijan-Turkey drills meant to send a tough message to Iran?, 2021.10.7(確認日2023年9月17日)

https://www.trtworld.com/magazine/are-azerbaijan-turkey-drills-meant-to-send-a-tough-message-to-iran-50556

[xlvi] Alex Vatanka, 2022.5.4

[xlvii] Fuad Shahbazov, Overconfidence Costs Iran Influence in the South Caucasus, Gulf International Forum, 2022.11.17(確認日2023年9月18日)

https://gulfif.org/overconfidence-costs-iran-influence-in-the-south-caucasus/

[xlviii] Reuters, Iran holds border war games amid tense relations with Azerbaijan, Reuters, 2021.10.2(確認日2023年9月18日)

https://www.reuters.com/world/middle-east/iran-holds-border-war-games-amid-tense-relations-with-azerbaijan-2021-10-01/

[xlix] Umud Shokri, Why Iran Opposes Azerbaijan’s Zangezur Corridor Project, Gulf International Forum, 2022.9.28(確認日2023年9月17日)

https://gulfif.org/why-iran-opposes-azerbaijans-zangezur-corridor-project/

[l] Devin Haas, Explainer: Azerbaijan, Iran and the crisis in the South Caucasus, Emerging Europe, 2023.2.2(確認日2023年9月18日)

https://emerging-europe.com/news/explainer-azerbaijan-iran-and-the-crisis-in-the-south-caucasus/

[li] Middle East Eye, Why Iranians are calling for war with Azerbaijan, Middle East Eye, 2023.4.11(確認日2023年9月18日)

https://www.middleeasteye.net/news/iran-azerbaijan-war-are-calling-why

[lii] Кирилл Кривошеев, Армянская оппозиция окружает Ереван, Коммерсанте, 2022.4.30(確認日2023年9月21日)

https://www.kommersant.ru/doc/5338588

[liii] Abigail McGowan, Azerbaijan’s Pressure on Nagorno-Karabakh: What to Know, Council on Foreign Relations, 2023.9.14(確認日2023年9月21日)

https://www.cfr.org/in-brief/azerbaijans-pressure-nagorno-karabakh-what-know

[liv] NEWS.am, Iran considers Nagorno-Karabakh part of Azerbaijan, says problems should be solved through dialog – Kanaani, NEWS.am, 2023.9.19(確認日2023年9月24日)

https://news.am/eng/news/781862.html

[lv] Virginia Pietromarchi and Federica Marsi, 2023.9.19

[lvi] Aleksandar Srbinovski, Armenia: Russia’s backdoor to circumvent sanctions, New Eastan Europa, 2023.5.26(確認日2023年9月24日)

https://neweasterneurope.eu/2023/05/26/armenia-russias-backdoor-to-circumvent-sanctions/

[lvii] eureporter, Iran-Armenia-Russia: The axis against Ukraine revealed, eureporter, 2023.4.2(確認日2023年9月24日)

https://www.eureporter.co/world/armenia/2023/04/02/iran-armenia-russia-the-axis-against-ukraine-revealed/

[lviii] Sam Fleming and Daria Mosolova, West probes potential sanction dodging as exports to Russia’s neighbours surge, Financial Times, 2023.2.23(確認日2023年9月24日)

https://www.ft.com/content/4961a96c-16ac-496b-8aba-16d6025e4dfe

[lix] Catherine Putz, Tajik-made Iranian Drones Are Not in Ukraine Either, The Diplomat, 2022.11.1(確認日2023年9月18日)

https://thediplomat.com/2022/11/tajik-made-iranian-drones-are-not-in-ukraine-either/

[lx] Oved Lobel, Russo-Iranian drone factory will eventually haunt the Middle East, Australia/Israel & Jewish Affairs Council, 2023.2.10(確認日2023年9月24日)

https://aijac.org.au/fresh-air/russo-iranian-drone-factory-will-eventually-haunt-the-middle-east/

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